島原城のおひざ元わが森岳商店街は、江戸時代から続く城下町で、明治になって島原鉄道の島原駅ができ、大正・昭和とますます繁栄を続けたそうです。島原半島の人たちが島原(森岳商店街)に出掛けることを「城下に行く」と言って、年輩の方たちの話を聞くと、「それはもうワクワクドキドキの出来事で、よそ行きを着て、めかし込んで出掛けたものだ」と懐かしそうに話してくれます。
鉄道から車へと社会が変化する中で、まちの中心は駅前から離れて行きました。気がつくと施設整備などに出遅れた森岳商店街はすっかり寂れてしまいました。
その分古い建物や街並がそのまま残っていて、今それが逆に人々の郷愁を誘って見直されています。この傾向は年輩の人に限らず若い人にも支持されているところをみると、単なるブームや流行では片付けられない人々の根元的な部分に響くものがあるのかもしれません。
森岳商店街の一角に大正時代建築の洋館があります。数年前まで床屋さんだったのですが、ご主人が引退したあと空き家になり、廃墟化しつつありました。この洋館「理髪舘」の前を往来したことのある人は皆保存を希望し、初めて訪れた人は感激して絶対なくしちゃダメだと言ってくれるイイ感じの建物です。
しかし、今の車時代の流れでは、古い建物は次々と駐車場になり、街並は急速に失われつつあります。強固な意志が無ければ街並は残せない時代に突入しているようです。
私たちは立ち上がりました。この洋館を残そう!今ある素材を活かしてまちづくりを進めようと考える私たちにとって、「理髪舘」の保存は大きな意味を持っています。大家さんは私たちの心意気に応えて洋館を無償提供してくださいました。それでも修復費用、維持管理など問題山積ですが多方面の協力を得て、この秋「青い理髪舘」は、街なか散策の拠点(案内所・公衆トイレ・ギャラリー・喫茶室)としてオープンしました。
ワクワクドキドキでぜひ「城下」にお出掛けください。