前ページ:説得 青草子2号目次 次ページ:会議2

市議選レポート

■対策会議(説明会前夜)

 母親を説得したその晩4月17日、明日は立候補予定者説明会という時に、近しい人たちに急な招集をかけた。来てくれた十数名のうち半数近くは事前に相談はしていたものの、聞きつけて飛んできた者もいた。場所はわかば写真館2階奥(学習塾アシストの教室である。)

 公約・マニフェスト・選挙方法の原案資料を、私の方で準備した。

公約案は
  1.島原半島は一つ
  2.中心街の活性化
  3.また来たくなる島原
  4.開かれた議会
  5.環境を考えた優しい街
選挙運動案については
・お金を使わないでも、議員になれることを証明する。・その収支を公開する。
・ポスター(内容・バンダナははずさない・誰が貼るか)・事前配布チラシ・応援者カード?
・はがき・選挙公報(今年から出る!)・事務所:わかば2階
・選挙カーは出さない。・インターネットの駆使などなど

 ありがたいものである。選挙を全く知らず、立候補した人間のために議論百出。皆真剣に「どうすれば当選できるか、と考えてくれた。

 ところが皆の総意(大方の意見)と私の思惑とは大きくかけ離れていた。簡単に言えば、「従来型の選挙VS新しい選挙」である。別の言い方があれば、「勝つための現実的な選挙VS理想選挙」。

 「金のかからない(金をかけない)選挙」についても大きな認識のズレがあった。私の言う金をかけないというのは「全然金をかけない」ということで、お金がない者には当然の選択なのに、金は法定費用(約290万円)内で納めそれ以外でかかる費用は極力少なくしようという考えで反論された。もちろん私が違反まがいの(法律違反ぎりぎりの)金を使うなんて考えてもいないのは、皆さんよく分かってくれているが、選挙に出るのに、いくらかの(数百万単位の)貯金ぐらいは当然用意しているだろうね(又は、借金の覚悟はあるんだろうね)という感じである。私が貧乏なことを知っている人たちは(しかも選挙は金がかかると思っているのか)カンパまでしてくれた。

 政策は訴えるべし、公約は歯切れ良く3つに絞り「正直がいちばん」のモットーを入れよう。これを分かりやすく、公報にも・はがきにも・ポスターにも繰り返そう。

 政策を訴えるだけでなく、一方通行にならないよう後援会紹介カードで応援者をリストアップし、個別に対話をしていくという、従来型の選挙の「集票パターン」は受け入れた。公営はがきといって、市議選の場合2000枚に限って送料が無料で投票依頼のはがきが発送できるのである。だから(おそらく)どの陣営も、この名簿づくりに力を入れるわけであります。

市議選レポート・資料
公約の案などは、話し合いの末、結局以下のようになりました。
後日出来上がった公営はがきを紹介します。宛名面1色刷・表面2色刷

■対策会議(しろうと集団)

 先ほど、はがきの無料送付のことを書いたが、この会議の時点でこういったルールを知っているのはH君ただ一人である。わが森岳まちづくりの会代表Y君が連絡をして、F町の町議でもある彼を呼んでくれたわけである。もちろんH君はボランティア活動などまちづくりを通じて面識もあり、僕らの森岳での活動をよく承知してくれている。彼のおかげで、しろうと集団の私たちは曲がりなりにも選挙が出来たわけである。

 会議の時点では、細かい数値は出てこなかったのでありますが、参考のために後日調査して補足しております。ともかくもH君がてきぱきとそれは違反だ、それはOKだが事前の届けが必要だなど、鋭い指摘を入れてくれて、会議は緊迫したものとなった。

■対策会議(選挙運動と政治活動)

 政策はともかく、方法として、何が選挙運動で何が選挙違反か、そこからスタートだ。

期 間 管 轄
政治活動 年中いつでも(選挙期間中活動制限あり) 県選管(島原振興局)
選挙運動 告示日届出後〜投票日までの選挙期間に限られる。 市選管(島原市役所)

 選挙運動は投票日前1週間だが、政治活動は一年中いつでもしていいわけであります。選挙運動のための準備(ポスターを作ったり。はがきを準備したり)だけが選挙期間前に許された事前選挙運動であり、対外的な投票依頼行為は全て違反である。

 選挙に金がかかり過ぎないようにとの配慮から、選挙は期間を区切り、費用上限を決めてある。政治活動は、どうしても選挙運動につながりやすいから、政治活動の中で選挙に関わる行為は一部例外を除いて制限がされている。

 えーっそれじゃ届出までは選挙運動(投票依頼)は出来ないのかい!口頭で立候補予定の表明はいいが投票依頼はだめだ。じゃあ何も出来ないじゃないか!ちまたにあふれているチラシ・パンフレットはどうなんだ!?

 よく選挙1ヶ月くらい前になると、あちこちからしおりやパンフレットが届くわけですが、これは政治家たちの日常政治活動のひとつであります。パンフレットには、「市議候補」とか「清き一票を」とか書くと政治活動ではなく選挙運動と判断され取り締まりを受ける。だから選挙のことに触れない範囲で、政策やらスローガンを並べ「政策検討資料」などと印刷して、顔と名前を売るため、後援会申込書とか、後援会入会紹介カードを添えるわけであります。

 「政治活動をするために早速振興局に行って、政治団体(松坂まさお後援会とか)の届けを出したほうがいいよ。」とH君。知らなかった。

 政治活動も選挙運動もきちんと会計報告を出さなければならない。市議選の法定費用は約290万円だ。つまり290万円以上使うと選挙違反である。ところが選挙前にばらまかれる「政策検討資料」なる豪華なカラーパンフレット費用は、政治活動費であって、選挙の費用とは別である。後方にこのたびの島原市議選挙の費用を紹介するが、それ以外に政治家たちは、政治活動費も捻出して政策を訴えるわけである。    

■対策会議(選挙カー)

 問題は選挙カーであります。選挙カーについてはそれこそケンケン諤々、選挙カーを出さないという結論までの道のりがなんと長かったことか。

 公職選挙法では名前の連呼行為は違反行為として原則禁じている。政策を訴えることが大事で、選挙カーは移動手段である。ところが公選法では、街頭演説から街頭演説への移動中の連呼行為は例外として認めている。これが世に言う選挙カーによる名前の連呼である。

 政策を訴えることなく(街頭演説をせず)、名前とスローガンのみの連呼は本末転倒。やかましいだけ。まちなかでは(とくに商店主たちは)車に乗りたがらない。もうひとつの理由は金がない。人も金も準備できそうに無い。

 いきなり「選挙カーを使わない。」と宣言したものだから皆の猛反撃を受けた。どうやって名前を浸透させるのか?!と。選挙カーを出さないというと「何もしないのか」という反応には辟易(へきえき)した。私はむきになって街頭演説・辻立ちをやると力説したが、(選挙カーを出さないことは選挙運動をしないことと断じる人たちに、内心「石頭め!」と思いながら、)少なくとも選挙に勝つために真剣に私に忠告してくれているのが分かるからじっと我慢して話を聞いた。

 問題は選挙カーを出せばお金が支給されることである。

選挙カー公費補助 (1日) ※看板・スピーカ・ウグイス嬢日当は出ない。  7日分で
車レンタル 車代15,300・運転手日当12,500・ガソリン代上限7,350 246,050円
タクシー使用 ガソリン運転手込みで64,500円 451,500円

 車レンタルの場合、約24万(上限)が支給されるのである。当然気のいい仲間が「俺の車を貸してやる。レンタル料金は寄付するからそれで看板やスピーカーをつけてはどうか。」と提案をする。しかし、仲間は忙しい商売人が多く、「お客さんの手前車に乗るのは遠慮したい。」「自分は忙しいから確約できない。」など、怪しい雲行き。自分の人徳の無さが暴露されてゆく。ウグイス嬢や運動員に日当を出すことは選挙違反ではない。認められている出費だ。

 というより私たち商人はホントに余裕が無くて、とても1週間選挙にハマルなど考えられないのである。日当を出す出さないの問題ではない。選挙カーを出すためにかかるエネルギーを考えると気が遠くなってきた。費用も結局かさむ一方だ。延々と皆の「車を出せ!」「車無しでは負ける」が続く。最も説得力があったのは、当選経験も落選経験もある町議H君である。曰く「理想の選挙をやるのではない、勝つための選挙なんだ!」

 「わかっとるわい、誰が選挙に出て、意見さえ言えればいいなどと思っているモノか!意見を言うだけなら今だって言っとるわい!勝つために、ポリシーを持って選挙カーを出さないと言っているだろうが!出遅れている自分が、他の候補と同じやり方で勝てるわけがないではないか。しかも経験が無くて、人の寄せにくい街なかでの立候補なんだぞ。」という内容を、言葉を選びながら説得するが、ついつい言葉が荒くなる。

 例によって皆の説教が始まる。「松坂の悪い癖だ、ちゃんと話を聞け!」「人が好意で言ってくれているのに、何で反論するか!」「法律で認められているってことは、それが一番の方法だからなのだよ。」などなど。険悪なムード。

次ページ