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18 2002/3/19 春爛漫

 森岳商店街の街路灯は、夜間に歩行者の足元を照らすだけでなく、側面に「道案内」「史跡紹介」「島原を詠んだ和歌や俳句」が刻まれていて、昼間も街の散策に一役買ってくれています。道行く人々の安全を祈願する道祖神といったところでしょうか。
 「肥後なまり筑後訛(なまり)や春の市」(広瀬釣仙)刻まれた俳句のお気に入りの一つです。島原の春は、初市とともにやって来て、島原半島の人たちは、どっと島原城下に押し寄せたそうです。島原城築城以来、(今の市役所前の)大手広場で三百年以上続いた最も島原らしい春の風物詩でありました。
 ランドセルは初市で買ってもらった、包丁や食器は初市でそろえた、サーカスもやって来てすごいにぎわいだった、と中年以上の人々に鮮やかな思い出として残っています。私も家のすぐ前だったから、毎日、五円、十円握って日が暮れるまで物色して回ったものでした。
 豊かな社会になって、車に追われるように、離れた霊丘公園に会場が移動してはや三十年、今年も露天商と植木市でにぎわったそうですが、往年の初市を知る者には寂しい限りであります。
 数年前、私たち森岳商店街は「元祖大手初市」と称して、市役所前に五〜六枚のテントを張って、するめくじ・風船ヨーヨー・綿菓子・射的・スマートボール・カルメラ焼きなどと、各店の商品を特価で持ち寄り、あの懐かしい初市を小さく再現しました。近所の子供たちには大受けで、石の上にも三年続けましたが、赤字続きで寂れる一方、一時退却。
 街並みがそのまま美術館という構想の下、一年がかりで整備した街路灯で道順を示して、翌春には森岳商店街全体を会場として「春爛漫市」と改めました。春の陽気に誘われて、そぞろ歩きを楽しんでもらおうというのんびり企画。
 五回目の今年は、三月二十一日から四日間。八女手漉(す)き和紙展・軒先骨董(こっとう)市など、野の花で飾られた街並み散策のあとには温泉巡りも準備しました。ぜひお出かけください。問い合わせは私でも結構です。電0957−62−4414