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市議選レポートバンダナ候補奮闘記

■告示、届出、ポスター貼り(5/18)

 いよいよ告示だ、よく届け出順というが、これは午前8時に市役所に集まった候補者又は代理人のくじで決める。どの陣営も大体2人で届け出る。部屋に入るのは一人だけ。23人集合するまでは無投票の目がある。しかしすぐに25人が集合。選挙戦スタートだ。まずクジを引く順番を決めるクジを引く。あとの一人は廊下で待っている。部屋の中・廊下見渡して候補者本人は「松坂まさお」ただ一人である。(候補者自ら届けに来るようでは選挙態勢は出来ていないと思われているかな。)クジ運が悪く、順番は23番。(うーむ定員最下位か前途多難)

 順番クジ1番の候補から順にクジを引く。2回目の本番クジが届け出順であり、同時に掲示板の番号である。廊下の相棒に番号を伝え、相棒は各陣営に携帯で連絡をしたり、走ったり。くじを引いた本人は引き続き届けを済ませ選挙七つ道具を受け取る。

 私の番。本番クジは24番。(ぬぬ、縁起でもない。はみ出したか。しかも時間がかかる。)しょうがないが廊下の妻に「24番」を伝える。2〜3人一組でチームを組んで待ち構える5組のポスター貼り軍団に連絡が飛ぶ。候補者自らのポスター貼りも覚悟していただけに有難い話である。H君、「24番はベストポジションだ、コーナーで目立つし、張りやすい場所だ。」と電話の向こうで檄を飛ばす。ようやく腕章やらのぼりやら受け取って、出陣式に向かう。


■ももたろさん

(第一声:大手広場)

 初日から好天の中、大手市役所前の出陣式を皮切りに「ももたろさん」選挙がスタートしました。ハンドマイク片手に2〜3人がのぼりを持って付き添う。このスタイルで最終日まで歩き通したわけです。まさに辻々に立ち止まっては、街頭演説をし、次の角まで歩いてはまた演説。辻説法であります。桃太郎と犬・サル・キジでしょうか。道行く年配の方が「ももたろさん」という。

 2〜3時間歩いて一休み、本人はぶっ通しだが、犬サルをメンバーチェンジしてまた2〜3時間。
姪っ子、いとこ、教え子、友人、妻、いろんな人たちが付き合ってくれて、車1台でビューッと移動しては又2〜3時間。2,3分の演説もあれば、10数分の演説もある。公約を中心に辻々で訴えました。照れくさかった握手も慣れて、ずいぶん沢山の人から励まされました。井戸端会議の奥さんたちが耳を傾けてくれる。聞いてもらった嬉しさに走って行って握手を求める。

  閑静な住宅地、誰か聞いているはずだと、空に向かって訴える。何の反応も無いことが続く、たまに窓を開けて会釈があったり、「がんばれよー」の掛け声がある。思わずグッとこみ上げる。「ありがとうございます!」。わざわざ玄関先まで出てきてじっと立って耳を傾けて聞いてくださる。「君は合併についてどう考えているか?」話しかけてくる方もいる。「1市16町対等合併です!」「よし分かった。応援する。」路地裏に入るといろんな生活が見える。住民の人と会話を交わし、知らなかったことを教えられる。

■夜は電話と名簿整理(票読み)

 暗くなるまで喚(おめ)き続け、気がつくと8時。スタッフが8時を告げ、とっさにたすきを外す。事務所に戻ると、おにぎりをかじりながら9時半まで電話作戦。そのあと名簿を整理する。後援会カードが続々届き、重複に二重丸。紹介してくれた人は花丸。そんな作業が延々と続く。

■すれ違う他候補

 選挙カーはすれ違いざま、相手候補の健闘をたたえる。相手候補の事務所前を通過するときも「○○候補の健闘をお祈りします。」という。これは移動中の連呼のひとつである。選挙カーはあくまで移動車であり、街頭演説のための移動マイクである。だから車を降りて街頭演説をしていればそちらが優先で、他の候補者は音を消して通過するのが常識である。ところがお構いなしに演説中の候補に大音量で「○○候補の健闘をお祈りします。」を浴びせかける非常識候補も多い。 

 10何人も同じ色のジャンバーが並び本格的に街頭演説をやっていればさすがに遠慮しながら通るが、私のような小さな街頭演説はほとんど無視された。始めは相手は悪気ではないから、こちらも演説を中断して「◇◇候補の・・」と返していたが、途中から(相手が候補者本人以外は)声がもったいなくなって、無言で深々と頭を下げ通過するのをじっと待つ方針に切り替えた。

 何人かの候補は私の演説体制を見ると、ボリュームを落として別の道へコースを変えるなど配慮してもらった。新人R候補は徹底していて、こちらの街頭演説を発見するや即マイクを切り、会釈をしてスーッと通過。そのまま演説を続けることが出来た。こちらが歩いているとボリュームを落として「健闘を祈ります」とやる。たいしたものだなあと思った。大多数の選挙カーが無神経に演説を妨害するから、ひときわ光って見えた。

■市原先生の応援

 市原先生は長崎の大学教授であります。私と同じ大学の先輩でもあります。森岳のまちづくりで何かとアドバイスを受けているわけですが、森岳の長老N氏が連絡してくれて、選挙なかびに応援に駆けつけてくれました。私の選挙方法も理解し、もちろんこれまでの私のまちづくりの考え方にも共鳴していただいているわけで、早速「ももたろさん」に参加してくださいました。

 まず先生が、歩きながら、本当になんと言っているか聞き取れないぐらいの小さな音のハンドマイクで「ただいま松坂さんが奥様と一緒にご挨拶にあがりました、私たちは彼のような民間のまちづくりの専門家を待っていました・・・」前触れをする。選挙カーが何台通過しても窓は締め切ったままで、人っ子一人いないと思われた通りに、何だろう?誰が来たの?という感じで窓が開き、玄関から人が出てくるのである。お構いなしに先生は会釈しながら、私のことを紹介しながらゆっくり歩く。人々は懸命に聞き取ろうとして耳をそばだてる。「それでは松坂さんです」と私にマイクを渡す。通りに顔を出した人たちに向かって短く政策を訴える。実にスマートだ。今まで向きになって懸命に声を枯らしていた自分を反省した。

 この日先生がこの緩急をつける方法を伝授してくださらなかったら、私の声は選挙半ばで潰れてしまっていただろう。

■個人演説会

 個人演説会を2回開催した。届出後個人演説会場が確定するので、告知はがきに入れられない。チラシは配れない。そこでポスターに小さなメモを貼り込むことにした。長崎(諫早?)でポスターを途中で貼りかえる(上に貼り足す)事例があって、選挙違反ではないことを知っていたからだ。T君が念のため選管に確認して、手配をしてくれた。また皆さんが百箇所近くの掲示板に走ってくれた。ももたろさんをしながらも、貼りこんだ。

 会場準備は経験者H君の指揮で万端整えられ、私たちは、ももたろさんのまま凱旋するというかっこいい演出だ。22日(木)霊丘公民館は。23日(金)森岳公民館。予想したよりもはるかに多くの方たちが参集してくれた。

■票読み (ハナマルは確実か?)

 事務所にはいろんな情報が入ってくる。候補者のいない選挙カーの候補者は同時並行で、確実票を押さえに回っているんだよ。選挙期間に入っての新たな票は取れないから、これまでの支持者を確実に固めているのだ。と、言う。新人の私に確実票(これまでの支持者)は当然無い。
 
 街頭演説で一人一人新規開拓するしかない。すでに自分を知っている支持者たちに幅広く手を振っている現職を尻目に、目の前で演説を聞いてくれている市民にエネルギーをこめて静かに訴え続けた。「辻立ち1回で一人ずつ。」そう心に言い聞かせた。

 森岳公民館の個人演説会も結構熱気があって手ごたえが感じられた。演説の中で票読みを披露した。「頑張ってください!はあやしくて△、応援してますは二重○か花○、ここに来ている人はみんなハナマル!」などユーモアを交えて判定基準を示し、その時点での花○票数を発表した。(370だったかと思う。)

 時々事務所に来てくれていたNさんが、その夜やってきて私たちの票読みデータを精査し深刻な顔をした。選挙経験豊かなNさん、携帯で誰かに電話をしている。「そっちに何票かなかね、こっちに落としたくなか新人の居るとよ。面白か、絶対モノになる。可能性はピカイチさ。それが全くしろうとで全然選挙ば知らんで完全に上滑りしとる。5票でも10票でもよかけん、こっちにまわしてくれんね。」と。

 個人演説会の盛り上がりはいっぺんで吹き飛んだ。A君の奥さんが届けてくれたトローチをなめて、つぶれたノドを心配しながら残すはあと1日となった。

■あと一歩!あと一票!

 三たびポスター軍団が走った。個人演説会案内メモの上に「あと一歩!あと一票!」の貼り紙を乗せた。最終日の早朝、同じことを考えていた私と参謀T君が、偶然同じ原稿を持ち寄った。最後の最後まで、みなに支えられての選挙だった。
             



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